まちだクリニックの町田宏です。

沖縄県において、平成11年から13年の間に二度の大きな「はしか」の流行があり9名の乳幼児の命が失われてしまいました。
はしか”0”プロジェクト

麻疹に感染していた方が幕張のコンサートに参加していたというニュースの続報です。

はしか急速流行…おそるべき感染力、免疫ないと100%発症
読売新聞(ヨミドクター) 9月5日(月)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00010000-yomidr-sctch&p=1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00010000-yomidr-sctch&p=2

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00010000-yomidr-sctch&p=3

 今、麻疹(はしか)の流行が大きな問題となっています。前回のコラムでは、幕張メッセのコンサートを訪れた男性が、麻疹に感染していたというニュースをご紹介しました。その後も、立川でのアニメ関連イベント、そして関西国際空港での集団感染と、日本の各地で麻疹発生が報告されています。麻疹は空気感染する、感染力の強いウイルス感染症です。今回は、麻疹対策の難しさ、そして今知っておきたい対応について解説することにしましょう。
 大阪府からの発表によると、関西空港で発生した麻疹の感染者は、接客業務を担当した従業員を中心に9月4日時点で計34人となっています。そして、さらに感染者は増えていくのではないかと危惧されています。
 どうして麻疹の感染は、こんなに急速に広がっているのでしょうか。その理由を知るためには、麻疹の感染力、潜伏期間、症状などを理解しておく必要があります。
空気感染する感染症
 麻疹は「空気感染」する感染力の強い感染症です。一般的な感染症で「空気感染」するのは、麻疹、水痘(みずぼうそう)、そして結核の3つしかありません。この「空気感染」を理解するためには、「 飛沫ひまつ 感染」と「空気感染」との違いを知っている必要があります。
 「飛沫感染」では、くしゃみや 咳せき などで水分を含む重く大きな粒子が飛ぶため、2m以内でほとんどの粒子が床に落ちてしまいます。したがって、距離が離れていれば直接の感染はありません。インフルエンザなどの一般的な呼吸器感染症のほとんどは、この「飛沫感染」によって感染します。一方「空気感染」では、小さく軽い粒子が空中を長く浮遊することで、非常に感染しやすい状況になってしまいます。
 麻疹は、一般的な感染症の中では最も感染力が強いことが知られています。この「感染のしやすさ」を知るために参考となる数値に「R0 (基本再生産数)」というものがあります。仮に、ワクチン接種などを受けていない、感染しやすい人が集まっている集団に、ある感染症をもった人が入ってきたとしましょう。その場合に、感染症をもった1人が平均して何人に感染するのかを、この「R0」という数値が示します。
 「R0」が1であれば、1人から1人に感染させるということを意味します。みなさんもよく知っているインフルエンザでは、この「R0」は1~2くらいといわれています。つまりインフルエンザに感染した1人は、まわりの1~2人に感染させることになるわけです。
 では、麻疹の感染についてはどうでしょうか。なんと、麻疹の「R0」は12~18、つまり麻疹を発症した1人は、まわりにいる麻疹に免疫のない12~18人もの人たちに感染させてしまうのです。
〜中略〜

 実は、麻疹の感染力が最も強いのは、発疹がでるまえの「カタル期」の時だということがわかっています。さらに麻疹は、そのような症状の出現する1日前から他の人に感染させる可能性があるとされています。つまり、本人が自覚のないまま、他の人に感染させる可能性もあるのです。

〜中略〜
 発疹や発熱で医療機関を受診する際には、その方法にも気をつけてください。麻疹は空気感染する感染力の強い感染症です。安易にクリニックや病院を受診すると、その間の交通機関や、受診した医療機関の待合室などで、さらに感染が拡大してしまう恐れがあるからです。
 発熱や発疹などの麻疹が疑われる症状があるときには、まず最寄りの保健所か医療機関に電話して相談をしてください。電話では、今回の麻疹発生に関連した件であることを伝え、その後の対応について確認しましょう。そして、病院までの移動時には、マスクを着用してください。

〜中略〜

今回の空港における麻疹の集団発生に驚かれた方も多いと思います。しかし、この事例は決して盲点であったわけではありません。麻疹は、国内では排除状態となっていたため、その後の発生は成人の輸入感染が中心となっていました。多くの海外渡航者が行き来する空港は、最も感染リスクの高い場所のひとつとなっていたのです。
 麻疹は、空気感染する感染力が非常に強いウイルス感染症です。しかし、予防接種によって感染拡大を防ぐことが可能な感染症でもあります。麻疹発生のリスクがあるのは、空港だけではありません。今回の流行から何を学び、何をすべきか、しっかりと今後の対策を立てることが求められています。
 麻疹の感染が国内で広がってしまうのは、感染しやすい人がまだ多く残っていることが原因です。感染力が強い麻疹の流行を防ぐためには、個々の立場で予防接種を進めることで、感染に強い社会をつくっていくしか方法はないのです。


ワクチンの副作用を心配するあまりに全てのワクチンを否定するのは危険だと思います。
社会生活を営む上でヒトからヒトへ感染する感染症(特に麻疹や風疹など、ワクチンの効果が優れているもの)に関してはできるだけ多くの方に接種をして欲しいと思います。

まちだクリニック